随想「正中線」

どんな武道でも正中線は重要だと説かれます。しかし、私の知る限りでは、その正体は謎です。自分の身体にそれがあるのかないのかさえ、分かりません。正直なところ。

まっすぐに気を付けで立っている人を正面から見れば、鼻・へそ・股間を通る鉛直な線が正中線かな?と思えます。だって、左右対称ですから。モノの本でもそのように説明しているものもあります。しかしその人を横から見て下さい。左右対称ではないですよね?どこに正中線があるのでしょう??ましてや半身や剣術でいう入身の正眼などになると、どこからどう見ても幾何学的には左右対称ではありませんから、正中線などないのでは?とも思えます。しかし武道では、正中線はある、大事なものだといわれ、正中線を建てろ、維持しろ、相手の正中線を割って入れなどと言われます。つまり正中線は、幾何学的な左右対称さに依るものではないのだろうと推測します。

一体何を以って正中線というのか?それをどう自分の身体に得てどう遣うのか?それが武道では大事・・・というより、それを永い稽古の末に体得・実現することこそが修行の一つの眼目であるような気がします。

正中線には、なにがしかの正体・解があるのかもしれません。しかし、それをどう認識し、意識し、技に活かし、言葉にしているかは個人個人で差がある気がします。なので、他人の言う正中線が私にはわからなかったり、私の説明するそれが他人には伝わらなかったりするのかもしれません。まあそれは正中線に限った話ではありませんが・・・。

精進あるのみですね。