随想「受け」

受けについてのアドバイスってあまり聞かないのですが、大切なことだと思っています。
今回は、私が受けを取るときに気をつけていること、指導するときに受けの方に説明していることを書いてみようと思います。

正面打ち一教の受けを例にします。

捕りの力の方向が悪いなどの理由で崩しがかからず、受けが捕りに対してくるりと背中を向けてしまうことがあります。場合によっては、上級者が下級者にたいして「技がかかっていないよ」と示すためにそのように受けていることもあります。しかし、これは受けとしては悪手です。完全に崩されていないとはいえ、相手に片腕を取られた状態で背中を向けるなど、もうどうにでもしてください!と言っているようなものです。

では、踏ん張って耐えれば良いでしょうか?それもよく見かけます。力強い正面打ちに対して捕りが押し込まれてしまったり、これまた効いていないことを示そうとどっかりと踏ん張ってしまったり・・・。やはりこれもまた悪手です。捕りの時には踏ん張るなと言われますよね?それなら受けだって踏ん張ってはいけないはずです。

そう、「捕りの際に気をつけることは、受けをとる際にも全く同じく気をつけるべし」なのです。

  • 力まない
  • 居着かない
  • 踏ん張らない
  • 姿勢は細く保つ
  • 正中線を疎かにしない
  • 正面をガラ空きにしない
  • 軽やかに滑らかに動く
  • 相手の追撃に備え、自分は反撃の期を伺う
  • etc・・・

これらがある程度身についた人が受けを取るとどうなるか?捕りの技がおかしい場合は自然と技が止まります。受けとしては踏ん張っていないし力んでもいないのに、ぶつかりが生まれて捕りがうんうん唸るのです。

そう、本来捕りは技を間違えてしまうと、自分が崩れてしまって立場が逆転するはずなのです。

あまり聞かない話かもしれません。反対に、「力一杯持て」とか「もっと思いっきり打ち込んでこい」とかはよく聞きます。初めのうちはそれでいいと思います。しかし力尽くではどうにもならない世界なんだと気づいた後は、力尽くではない世界の稽古をしたほうが良いと思います。

合氣道に限りませんが、どうも武道では力ずくで自由にかかってくる相手に対して、しっかりと対応して見せることが、暗黙の了解というか、求められている気がします。特に指導者や有段者には。

分からないではないのですが、原理原則を学ばない・学べないうちからそうした状況に応じようとばかりしていると、なかなか先の世界に進めないような気もするのです。

だって、自由な相手に応じられるのはしっかりと原理原則を発揮できるくらい修行が進んだ人だし、その原理原則は力尽くでやっていては気づくこともできないのですから・・・。ジレンマを感じるところです。

精進あるのみですね。