随想「事実と真実」

師範が技をご説明してくださる時、どの様な技にせよ、「事実に囚われず、事実と真実を統合しなさい」とおっしゃいます。

思い込みと囚われ

事実は、個人が得た限られた情報で下す認識に過ぎません。言い換えれば「思い込み」というやつです。

真実を様々なフィルターで濾してみて、残ったものが事実です。「残ったもの」ならまだマシでしょう。普通は濾すにとどまらず、余計な思い込みで余計な味をつけたり、変にネジくりまわして形を歪曲したりして受け止めて(思い込んで)しまいがちです。自分が持つ色眼鏡や判断基準といった枠組みに「囚われている」とも言えます。

真実はそうした個人的なこととは無縁に厳として在るものです。

入身転換で考える

簡単のために逆半身片手取りの入身転換で説明すると、受けに取られた所、取られたということが「事実」です。普通の人はなんとかして入身転換しようと、握られた手をこねくり回してしまいます。
取られたのは片手だけで、他の体はあいも変わらず自由であるにも関わらず、片手を取られたという「事実」だけでもう動けなくなってしまう。
そうではなく、取られたところは放っておいて、自由な体で動いてみればなんと入身転換のやりやすいことか・・・。

取られた手を気にしない。取られたということに「反応しない」とも言えます。
動けるところで動く。そして、事実を含めた全てが統合される様な一点「真実」があるから、そこを目指す。そこを大切にして技を行う。

まずは、取られた手と反対の手をしっかりと意識して使うということから始めてみると、なんとなく感覚を掴みやすいと思います。やがてその感覚を全身、そして身体の外にまで広げていきます。

入身転換のコツ

つい最近試してみて良かったのは、取られる手とは逆半身の手に水を注いだコップをもち、その水がこぼれない様に、揺れない様にというのをイメージして入身転換するというものです。

イメージでもいいし、実際コップを持ってみてもいいし。意外といいですよ。取られた手以外のところを意識するということが自然とできますので。

是非お試しあれ。