随想「自然体」

新コーナーの随想です。
当道場の道場長が稽古・指導で気を付けていることや、普段考えていることを綴っていこうと思います。
技術的なことも書いていこうと思いますが、合氣道も人生も修行中の身ですから、「この記事を書いた時点ではそんな風に考えていたのね」程度のものです。
よろしくお願いします。

さて、初回は「自然体について」です。初回から難しいテーマですが大丈夫でしょうか??

武道では姿勢が大切といわれ、とりわけ自然体というものの重要性が説かれます。
私もそう説明をすることがありますし、特に初心者の方には必ず説明をします。その際の説明・実演として、次のようなことをしています。

  1. 自分で思う良い姿勢をしてもらう。たいてい皆、学校で習った”気を付け”になる。
  2. その姿勢で身体を押されると、すぐぐらついてしまうし、咄嗟の攻撃をよけようとすると、動き出しに大きな遅れが出る。
  3. 次に、足を肩幅に開いてつま先を前に向けて膝を緩やかにし、手を合掌から自然に垂らして腿に軽く添える。気持ちを落ち着けて、立つのに必要な力以外の余分な力を抜く。
  4. この姿勢だと押されてもグラつきではなく粘りがあり、咄嗟の場合にも動きやすい。

3でいう立ち方を自然体だよ、と初心者には説明をしていますが、さて、本当にその姿勢は自然体なのでしょうか?私は、有段者であればそれは自然体のごく表面的なことだぞと気付いてほしいと思います。
私はこの説明・実演の目的は、「体育的に良い姿勢として学んできた気を付けの姿勢は、武道的にはNGであることを感じてもらうこと」「人は知らずのうちに余分な力を使っているもので、それを自覚して抜いてみること」であると考えています。

では、自然体とはどんなものなのか?非常に簡単な説明になってしまいますが、「特段構えてもいないのに攻撃すべき箇所、つまりスキが全くない状態」を言うと思います。つまり、足が開いているか閉じているかとか、腕がどこに何度の角度であるかとかいった、姿かたちの問題ではないということです。スキがないということが達成できているなら、行住坐臥何をしていてもそれは自然体です。
そう考えると、先ほど「有段者であれば~」といった意味が分かると思いますが、素人がいくら3の姿勢を取ったところで、それは自然体とは言えないということです。稽古を正しく長く積んだ結果、ようやく身につくものなのです。見る人が見ればその差は歴然とわかるでしょうし、武道を嗜んでいるのなら、わかるようになりたいものです。

私などは自然体にはまだまだ程遠く、構えてみれば「ああ、これは駄目だなあ、居着いているなあ」、動いてみれば「ああ、これは駄目だなあ、やられちゃったなあ」と反省のし通しです。それは、技ができた・できないとはまた別な感覚です。

さらに合氣道ではスキがないということに加えて、開祖がおっしゃった「万有愛護、相手を優しく包み混み、宇宙とも一体となる。」ことを目指すのですから、これは容易なことではありませんね。

精進あるのみです。